こども相談室
第35回 母乳育児中の病気について
母乳育児中、母乳を与えてはいけない病気、もしくは与えても影響のない病気などありますか?あるとしたら病名は?授乳についての注意事項を教えてください。
これからの季節、お母さんがカゼをひく機会などが増えてきますね。カゼをひいて熱が出たりしたとき、赤ちゃんに母乳をのませてよいか迷われることも多いと思います。
ほとんどの感染症は授乳が可能です。カゼ症候群など多くの感染症は、感染経路は飛沫・接触感染です。母乳の中にウィルスが出ることは稀ですし、お母さんに症状がでたときには、母乳の中にはお母さんがかかったカゼのウィルスを打ち消す免疫(lgA)が出てきていますので、赤ちゃんを守ってくれる可能性もあります。咳などで赤ちゃんがカゼウィルスが感染しないように、マスクや手荒いに注意する必要はあるでしょう。
母乳からウィルスが感染することが証明されている感染症は、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)HTLV1(成人T細胞白血病ウィルス)CMV(サイトメガロウィルス)です。お母さんがこれらの病気の場合には、母乳をやめるか、あげ方の工夫が必要ですので医師にご相談ください。
薬をのむことになる場合もありますね。この場合も、ほとんどの場合授乳継続が可能です。
多くの薬では母乳の中に移行する薬の量は1%未満です。しかも、赤ちゃんに対して有害な影響が出る薬はほとんどありません。医師に授乳していることを告げて、安心な薬を処方してもらうのが良いでしょう。抗がん剤、一部の向精神薬、などは授乳を中止しなければなりません。詳しい情報は国立成育医療センターのHP<妊娠と薬情報センター>などをご参照ください。
喘息や糖尿病など慢性的な病気では、お母さんの体調がゆるせば母乳をのませてはいけない場合はほとんどありません。やはり、お母さんが飲んでいる薬が問題になるでしょう。喘息なら吸入する薬で治療するなど、母乳に影響の少ない薬に代えてもらうように、主治医に相談してみるのもよいかもしれません。
(千葉県小児科医会理事 原木 真名 医師)